凡人大学生レポート保管庫~博物館編

博物館が抱えているリスク

 

 近年、博物館で保管されている歴史的価値のある遺産や宝石などが盗まれる被害が増加傾向にある。授業内の動画で盗難や不法売買などの危険性を学び、被害の多さを改めて知った。しかし、これらの問題は人為的なものであるため、盗難件数の増加や時間が経つにつれてイノベーション化が盛んになり、対策することが容易になると考えた。そのため、私は人為的な問題とは別である、自然的な問題の自然災害について考えていきたいと思う。最近、地球温暖化の影響で異常気象が多発し、災害の被害が大きくなっている。さらに、近々、南海トラフ巨大地震が発生すると予測されており、災害の被害を最小限にするために自然災害対策を熟考する必要があると考えられている。これらの考えは博物館に保管されている遺産などにも当てはまるため、過去に起こった自然災害を例に対応策を考えたいと思う。

最初に、神戸市立博物館を例にして考えたいと思う。1955年に起こった阪神淡路大震災で神戸私立博物館の建物自体に破損個所は少なかったが、入り口が25㎝、沈下し壁が傾いたという被災があった。さらに、博物館周辺が土地の液状化により地盤が沈下し地下水が2mまで吹き上げたとなっている。その後、建物の躯体に破損はなかったが1年間休館となった。しかし、建物の中の展示資料は多少破損したが、ケースで保護していたため、多くの資料を庇護できた。この事例は、災害の規模にもよるが、多くの展示資料をケースで保護することで被害を小さくできたため、良策だと思った。

 次に、新潟県中越地震で被害を受けた、十日町市博物館を例に考えたいと思う。十日町市博物館には国宝の火焔型土器や深鉢型土器など約20点の緊急修理が必要となる被害を受けた。火焔型土器は、地盤と建物を切り離し、揺れを少なくする免震台に置かれていたが、阪神淡路大震災のような横揺れではなく、縦揺れの地震だったため、破損したという事例があった。この事例は火焔型土器に砂袋を中に入れることや土器を固定し、ケースで囲うことで、保護できたと分析する。十分な対策ができなかった要因には火焔型土器の歴史や魅力を間近に感じてもらうために保護対策を怠ったことだと考えた。この要因の対策は常に保護対策を怠らないことだが、遺産の魅力を感じてもらうため、一時的に保護対策を解除し、魅力を感じてもらうなどの対策が必要だと考える。これらの事例を再び起こさないために現在、行われている地震対策を分析しようと思う。

 地震対策として、台湾の地震対策を例に考えたいと思う。台湾の國立故宮博物館では、耐震工事が実施されていることや分館では免震装置が多く設置されており、優秀な対策がなされている。しかし、多くの博物館は予算が不足しているため、あまり普及していない。この事例では資金不足が問題視されている。そのため、地震が起きて液状化を防ぐための地盤工事や大掛かりな装置の導入ではなく、作品や遺産などを少数に分けてケースで囲ったりすることで資金を節約することができ、尚且つ落下防止対策や防犯対策として効果も発揮できると考えた。

 次に、博物館の水害被害について2019年に起こった台風19号を事例に考えていく。2019年の10月中旬に台風が神奈川県を通り、川崎市市民ミュージアムのすべての収蔵庫が浸水し、神奈川県の文化財24点や戦前の漫画などが被災した。この事例は、水害対策として地下に鉄製の金庫で囲われていたが、水圧に耐え切れず破損して水が大量に流れてしまった。この浸水の対策として2階や3階に収蔵庫を設置するのも良策と思うが、防犯対策が怠ってしまう。そのため、地下に巨大な貯水池を水害対策として設置し、その上に収蔵庫を造ると効果的だと考えた。現在、取り組まれている水害対策について考える。

 水害対策の例として、タイの水害対策を例に分析しようと思う。タイでは長時間の雨季があるため、様々な対策が存在する。その1つとして土地を生かした緊急堤防の設置を取り上げたいと思う。タイでは、7月から12月にかけて洪水が多く発生する。川付近は非常に平地が続いており、標高が低いという特徴がある。このような土地の特徴からタイは浸水しやすく、標高の高いところに博物館を移転させた。さらに、水害を防ぐために緊急堤防を設置し人口的な壁を作り、その上、下水道からの内水氾濫を防ぐために排水設備を整えている。しかし、現在の日本ではこの事例の対策も資金不足が問題となり、すべての博物館にタイの対策を取り入れることは難しいと考えた。そのため、日本の土地を生かし、山地には排水処理装置を設置せず、部分的に設置することで、資金不足問題も解決し、水害を防ぐことができると考える。

 今回、博物館が抱える自然災害のリスクについて調べて、自然災害の種類に合った対策や避難方法が必要だと理解した。そして、自然災害が無くなることはないため、時代や文化ごとに対応案を出し続けることが必要だと考えた。そのためには、現在抱えている博物館の問題を多くの人に知らせる必要がある。

 

以上

 

参考文系

台風19号 貴重な絵画浸水 川崎の美術館、26万点収蔵:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

第5回館長講座「博物館での災害」dai5kaikanchoukouza.pdf (pref.miyagi.jp)

平成20年度 博物館における施設管理・リスクマネージメントに関する調査研究報告書 | 文化庁 (bunka.go.jp)

気候変動とは?地球温暖化や自然災害など様々な影響が生じている現状を解説 (gooddo.jp)

BELCA賞 神戸市立博物館 (belca.or.jp)

https://www.bunchuken.or.jp/wp-bunchuken/wp-content/uploads/2021/07/81_2.pdf

国内外の博物館・美術館における災害対策の現状と比較

ご清聴ありがとうございました。